ガスクロマトグラフの原理や構造は?何を測定できる機器?

ガスクロマトグラフとは聞きなれない名前ですが、気体の中に含まれているガスの濃度を測定する機器です。空気中に汚染物質がどのくらい含まれているか、などを測定するときには欠かせません。

そこで、今回はこのガスクロマトグラフの原理や構造をご紹介しましょう。気体は液体と違って濃度に差が少ないです。ですから、比重などによって計測することはできません。答えは、この記事を読めば分かりますよ。興味がある方はぜひこの記事を読んで、構造や原理を理解してください。

    1. ガスクロマトグラフとはどんな測定器?
    2. ガスクロマトグラフの構造や原理は?
    3. 試料の注入方法は?
    4. ガスクロマトグラフで測定できるものは?

1.ガスクロマトグラフとはどんな測定器?

ガスクロマトグラフとは、気体の中に含まれている特定のガスの濃度を測定する機器です。たとえば、空気は窒素が78%に酸素が20%、そして、残り2%に二酸化炭素をはじめとするほかの気体が含まれています。ガスクロマトグラフを使えば、その2%の中にどのような気体がどのくらいの濃度で含まれているかも調べられるでしょう。

ちなみに、ガスクロマトグラフではかったガスの濃度は、ppmという単位で現されます。自動車の排気ガスの濃度が記載されているパンフレットなどでこの単位を見たことがある方もいるでしょう。1ppmは1%の1000分の1です。つまりそのくらい薄い濃度の気体も測定できます。

ガスクロマトグラフとはガスの濃度を測定する機械なんですね。
はい。排気ガスの測定などに使われています。

2.ガスクロマトグラフの構造や原理は?

ガスクロマトグラフの構造はキャリアガス、試料導入部、カラム、検出器などの部品から成り立っています。キャリアガスとはガスクロマトグラフの中に常に流し続けるガスのことです。窒素やヘリウム、水素など反応性の薄いガスが使われています。キャリアガスの種類が変われば、検査する気体に含まれるガスの中で検出されるものが微妙に変わってくるでしょう。

つまり、検出の基準値を決めるガスです。現在は、ヘリウムガスが使われることが多いでしょう。試料とは、測定したいガスのことです。サンプルガスといわれることもあります。試料はごく少量で構いませんが、常に同じ体積のガスを注入し続ける必要があるため、注射器に使われるシリンジポンプによって注入されることがほとんどです。

カラムはガスクロマトグラフの心臓部といっても過言ではありません。カラムは細長い管の中に充てん剤が詰められたものです。これがらせん状に丸められてガスクロマトグラフの中に入っています。試料がこのカラムの中を通り抜けると、充てん剤の効果で資料の中に入っている物質が大きさ順に出てくるのです。これにより、検出器にかけると物質ごとの濃度が測定できます。これが、ガスクロマトグラフの原理です。

さて、カラムを抜けて大きさごとに寄り分けられた試料のガス内の物質は、検出器によって濃度を電気信号に変換されます。この電気信号がクロマトチャートに反映されて、山や谷を描くラインが表示されるのです。なお、補足ですが、試料がカラムを抜けて検出器で濃度が検出されるまでの時間を、保持時間といいます。

ガスクロマトグラフは、キャリアガスと試料で測定するんですね。
はい。ガスの種類も確かめることができます。

3.試料の注入方法は?

この項では、ガスクロマトグラフに検査をするガスを注入する方法の種類についてご紹介します。いったいどのような種類があるのでしょうか?

3-1.加熱気化注入

加熱気化注入とは、試料の注入口を試料の沸点以上に加熱しておいて一気に注入する方法です。これにより、カラムに過大な負荷がかかるのを防ぐことができます。沸点以上に注入口を加熱しているため、注入口からカラムに到達する試料はごくわずかです。ですから、低濃度サンプルを検出するには不向きになります。加熱気化注入は、さらにスプリット注入とダイレクト注入さらに、試料のすべてを注入するスプリットレス注入に分類されるのです。

3-2.非加熱注入

オンカラム注入法といわれるものです。試料の全量を、加熱しない状態で注入口からカラムにそそぎ入れます。これにより、微量の分析も可能になり、検査の精度も格段に上がるのです。ただし、カラムに負荷がかかりすぎることもあるため、どんなガスに出も使えるというわけではありません。

試料の注入方法は複数あるんですね。
はい。測定したいガスの特徴によって使い分けましょう。

4.ガスクロマトグラフで測定できるものは?

この項では、ガスクロマトグラフの使い道などをご紹介します。これからガスクロマトグラフを導入しようという方は、ぜひ参考にしてください。

4-1.食品の分析

今は、世界中からいろいろな食品が輸入されています。日本では、食品には厳しい安全基準が設けられているのです。しかし、輸入食品には体に有害な物質が混入している可能性があります。食品をガスクロマトグラフで検査することで、ダイオキシンをはじめとする残留汚染物質を調査できるのでしょう。一度に大量の食品を調査できるので、効率的です。

4-2.環境の分析

ガスクロマトフラフの使い道というと、真っ先に環境の分析をイメージする方も多いでしょう。空気にはさまざまな物質が溶けこんでいます。特に、工業地域の空気の中には工場から排出された煙の中に含まれている有害物質が含まれていることもあるのです。ですから、周辺の空気を分析することで環境汚染の度合いをはかります。

また、日本では工場などの煙突に有害物質を取りのぞいて空気中に放出しない装置がつけられているのです。その効果を証明するためにも使われることが多いでしょう。何かの事故がきっかけで急に汚染物質が空中に放出された場合なども、それを検査するために用いられることがあります。

4-3.石油製品などの分析

石油製品は燃料として世界中で大活躍しています。石油は原油を原料とした化石燃料で、生成方法によってガソリンやディーゼル燃料、軽油、灯油などになるのです。石油製品は燃やすと二酸化炭素をはじめとする環境汚染物質が出ます。不純物が含まれているほど、汚染物質は多くなるでしょう。

そこで、品質検査を兼ねて石油製品を分析することも少なくありません。粗悪な石油製品を使っていると、設備の劣化が早まるだけでなく環境汚染にもつながるでしょう。だからこそ、定期的な検査は欠かせません。

場所によっては石油製品だけでなく天然ガスを検査するところもあります。石油製品を燃やすことで発生する汚染物質を取りのぞく新しい装置の開発にも、検査結果が役立つこともあるでしょう。さらに、警報などの発令の基準になることもあります。

ガスクロマトグラフで測定できるものは複数あるんですね。
はい。食品の分析も可能です。

おわりに

今回はガスクロマトグラフの原理や構造についてご紹介しました。私たちの身の回りに出ているいろいろな警報も、ガスクロマトグラフの検査結果を元に出しているものも多いでしょう。さらに、肺が巣の規制値などもガスクロマトグラフの検査結果を元に、制定していることもあります。ほんの40年ほど前まで、日本でも大気汚染は深刻でした。工業地域ではぜん息患者なども多数発生していたのです。それが、現在では光化学スモッグ注意報の警報もまれになりました。

これは、環境に対する関心の高まりと同時に、大気汚染を数値化して分かりやすく表示できるガスクロマトグラフの成果もあったことでしょう。ですから、ガスクロマトグラフを使って空気や品質の検査をしているところは以外と多いのです。そのため、ガスクロマトグラフはいろいろな製造メーカーがあります。

また、中古市場も活発なため高価なガスクロマトグラフの購入を考えている方は、中古も検討してみましょう。