イオンクロマトグラフの原理って? 基礎知識を学ぼう!
イオンクロマトグラフ。研究室や会社などで取り入れようと思っているけれど、原理や分類などの詳しい部分は知らないという人も多いのはないでしょうか?
そこで、今回はイオンクロマトグラフにまつわる基礎的な知識を、簡単に解説していきたいと思います。インクロマトグラフを扱う代表的なメーカーについてもご紹介しますので、ぜひ最後までおつきあいください。
1.クロマトグラフについて
イオンクロマトグラフについて知るには、まずクロマトグラフがどのようなものかを知る必要があります。簡単に説明していきますので、すでに知っているという方もおさらいしてみましょう。
1-1.クロマトグラフとは?
クロマトグラフ(Chromatograph)とは、化学的な性質や物理的な性質、あるいは相互作用などを利用することで物質を分離させる装置のことです。ちなみに、このクロマトグラフを用いて得られる、分離像や吸光度などを電気信号に変換し、その強さを時間経過に従って記録したものを『クロマトグラム (Chromatogram)』といいます。 また、ろ紙の上のスポットとして観察するときの記録も、クロマトグラムと呼ぶのが一般的です。
1-2.クロマトグラフの歴史
クロマトグラフは1906年にロシアの植物学者ミハイル・ツヴェットが発明した装置です。ツヴェットは、立てたカラム(炭酸カルシウムをガラス管の中に詰めたもの)の上に抽出した色素を乗せ、上から石油エーテルを流してみました。すると、色の異なる吸着帯として分離することを発見したのです。
ちなみに、クロマトグラフという名称については、ギリシャ語のChroma(色)とGraphos(記録)からできた造語。 直訳すれば『色の記録』という意味になります。
1-3.分離を行う意義とは?
『化学』について辞書で調べると、『物質の構成・性質・変換について分子・原子レベルで扱う自然科学』という書かれ方をしているはず。つまり、化学において重要なことは、物質を構成する原子や分子、ひいてはそれらによって出来上がる成分の組成や構造を研究することです。
しかし、この世に存在するものの多くはさまざまなものがくっつき合った混合物。そのまま調べるのは非常に大変です。
ですが、混ざり合ったものを分離し、調べたい目的の物質だけを取り出すことができれば、調べやすくなりますよね。ですから、分離する必要が出てくるわけです。
1-4.クロマトグラフの原理と種類
クロマトグラフにおいては、固定相(担体)と呼ばれる物質の表面・内部を、移動相と呼ばれる物質が通過する過程で物質が分離されます。
固定相と移動相の種類や組み合わせにより、クロマトグラフは大きく分けて2つに分類が可能です。1つ目が『ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography)』。もう1つが『液体クロマトグラフィー(Liquid Chromatography)』です。さらに、固定相が液体であるのか、固体であるのか、はたまた気体であるのかなどにより、さらに細かく分類されていきます。
ガスクロマトグラフィー(移動相は気体)
- 固定相が液体……Gas / Liquid Chromatography(GLC)
- 固定相が固体……Gas / Solid Chromatography(GSC)
液体クロマトグラフィー(移動相は液体)
- 固定相が液体……Liquid / Liquid Chromatography(LLC)
- 固定相が固体……Liquid / Solid Chromatography(LSC)
2.イオンクロマトグラフとは?
では、イオンクロマトグラフは、どのようなクロマトグラフなのでしょうか?
2-1.イオンクロマトグラフとは?
イオンクロマトグラフは、イオンクロマトグラフは固定相に『イオン交換体』を用いる液体クロマトグラフィーの一種。有機酸や無機イオンなどといったイオン性物質、またはタンパク質・核酸・アミノ酸などといった電荷を持つ分子を含んだサンプルの定性・定量を行うための装置です。
機器の基本構造は『高速液体クロマトグラフィー(HPLC)』と同様ですが、カラム部と検出部の間にサプレッサー部があることが多いでしょう。検出器には電気伝導度検出器が用いられており、移動相に含まれているイオンをサプレッサー部が排除し、検出感度を上げてくれます。
また、分離された溶液の電気伝導度を測定することで、電気伝導度の差からサンプルに含まれる物質の定性・定量分析を行うことが可能です。
2-2.イオンクロマトグラフが使用される分野
電荷を持つ物質の分離・精製・分析に有効的なので、有機化学・食品栄養学・生化学など、さまざまな分野で活躍が期待できるでしょう。
具体例を挙げれば、環境分野における水質分析。医薬品分野における合成タンパク質の分離・精製・品質管理に用いることが可能です。そのほか、工業化学におけるウェハ表面付着物の分析などにも使われています。
3.代表的なメーカーと価格について
3-1.代表的なメーカーの一覧
イオンクロマトグラフは、専門的な機械のために、そこら辺の店で気軽に買えるというものではありません。製造メーカーも限られていますので、ここで覚えておきましょう。
- 東亜ディーケー株式会社
- 株式会社イーアールシー
- 株式会社池田理化
- 有限会社イーデンキ
- 有限会社インターリンク(中古品)
- サンインスツルメント株式会社
- GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社
- ジーエルサイエンス株式会社
- 株式会社島津製作所
- 東ソー株式会社
- 日本分光株式会社
- 藤本科学株式会社
- 株式会社プロダクトアイ(中古品)
3-2.イオンクロマトグラフの値段はどのくらい?
ご紹介した一般的な企業から、新品のイオンクロマトグラフを購入する場合の相場は、だいたい『200万~300万円』の間でしょう。もちろん、精度やグレードなどで値段は変わってきますので一概には言えません。
中古品の場合は、使用年数や方の古さで大きく値段が変わってきます。安いものでは『20万~50万円』程度で購入できることもあるでしょう。
また、購入せずにレンタル契約やリース契約をすることもできます。レンタルやリースの場合の相場は『1か月あたり15万~25万円』の間ぐらいでしょう。何年も使うことを考えるとそんなので、お金があるのならば購入した方が良いかも知れませんね。
まとめ
いかがでしたか?
今回はイオンクロマトグラフについてご紹介しました。
- クロマトグラフについて
- イオンクロマトグラフとは?
- 代表的なメーカーと価格について
イオンクロマトグラフは、さまざまな研究分野で活躍します。研究室や企業などで、ぜひ導入を検討してみてくださいね。