1/2桁って何なの!?デジタルマルチメーター(テスター)の基礎知識!
デジタルマルチメーター(デジタルテスター)は電気工事の現場や電気工作時、あるいは研究室などで活躍する機械です。電気を扱う仕事をしている方には絶対に欠かせない道具といっても過言ではありません。
しかし、まだデジタルマルチメーターを持っていない方にとっては、分からないことも多いでしょう。
そこで、今回はデジタルマルチメーターにまつわる基本的な知識をご紹介します。
これらの記事を読むことでデジタルマルチメーターについて簡単に知ることができます。間違った使い方をして後悔しないためにも、ぜひ最後まで一緒に学んでいきましょう。
1.デジタルマルチメーターの基礎知識
1-1.デジタルマルチメーターとは
デジタルマルチメーターとは『アナログ-デジタル変換回路』を用いた回路計のこと。電流・電圧・抵抗・温度などといった複数の計測を行うことが可能です。別名、デジタルテスターとも呼ばれます。
1-2.構造
デジタルマルチメーターは以下の部品によって構成されています。
- メーター……測定値を表示する部分。
- ロータリースイッチ……測定機能の切り替えを行う部分
- 導通ブザー……音を使って導通状態を示す部分
- 測定用端子……プラス・マイナスのテストリードを接続する部分
- テストリード……金属棒や絶縁棒が先に付いたリード線。実験などでの接触用に使う。
1-3.導入の目的
デジタルマルチメーターが必要となるのは、主に電気工作や電気工事、研究などの場面でしょう。
せっかく電気工作物を作っても、せっかく電気工事を行っても、正常に動作しなければ意味がありません。しかし、正常に動作するのかどうかは目で見て判断するのは困難です。自分自身の配線ミスなどであれば、見て分かることもあるでしょう。しかし、パーツの初期不良などは見た目では判断できませんよね。
そんなときに、デジタルマルチメーターを使うことで、正常な電圧や抵抗かどうか。あるいは、配線の導通が正しいかどうかなどをチェックできるのです。
1-4.デジタルマルチメーターは絶対に必要?
結論からいえば、絶対に必要です。
デジタルマルチメーター……ひいては回路計に慣れれば分かりますが、あるとないとでは便利さがまったく違います。
また、デジタルマルチメーターを使用せずに電気工作などを行うことで、場合によっては事故を引き起こすこともあるでしょう。ですから、このような意味でも、絶対に用意しておくべき機械です。
2.デジタルマルチメーターについて
2-1.種類について
実はデジタルマルチメーター以外にもアナログマルチメーターというものもあります。その名のとおり、アナログ表示……つまり指針が動くことによって表示する機械です。
2-2.アナログマルチメーターとの違い
まずは正確性の違いです。回路の問題でアナログマルチメーターよりもデジタルマルチメーターの方が正確に計ることができるとされています。
また、機能面で見ても、やはりデジタルマルチメーターに軍配が上がるでしょう。というのも、デジタルマルチメーターの方が多機能だからです。特にデジタルマルチメーターには必ず付いている導通ブザー機能は、音で導通しているかどうかが分かるため、非常に分かりやすくて優れた機能でしょう。アナログの場合、導通検査は指針の振れで判断しなければいけないので、分かりづらいのです。
また、アナログの場合は表示を読むときに細かいメモリーに目をこらす必要がありますが、デジタルでは大きく数字が表示されるので分かりやすいというメリットもあります。
とはいえ、アナログも劣った部分だけではありません。デジタルでは変化が起きないような小さい電圧変化なども、アナログでは物理的に指針が揺れるので判断できることがあるからです。
とはいえ、全体的な面で考慮すれば、デジタルの方が優れているといっていいでしょう。
2-3.主なメーカー
主なメーカーには以下のような会社があります。
2-3-1.国内メーカー
- 岩崎通信機
- 日置電機(HIOKI)
- 共立電気計器
- 三和電気計器
- エー・アンド・デイ
- 横河メータ&インスツルメンツ
- カイセ
2-3-2.海外メーカー
- キーサイト・テクノロジー
- フルーク・キャリブレーション
- テクトロニクス
- ケースレーインスツルメンツ
国内メーカーなら岩崎通信機が人気。操作性や見やすさに定評があり、かつ日本製らしい正確性があるためです。また、デジタルマルチメーターでは異例の高速サンプリング3万回を実現した製品(VOAC7602)で知られています。
海外メーカーであれば、キーサイト・テクノロジーが人気。『Truevolt』という独自のテクノロジーによって高い精度の測定を可能にしているためです。
2-4.最近の傾向
最近の傾向として、『オート・ゼロ機能』を備えた製品が多いでしょう。オート・ゼロ機能とは、一定以上の間パルス入力がないと、自動的に表示値(周波数)をゼロにする機能です。
オート・ゼロ機能を使うことで温度による内部電圧オフセットが除去できます。結果として正確な測定結果を得ることができるのです。
ちなみに、オート・ゼロ機能を使うと測定速度が下がってしまいます。オート・ゼロ機能オフにすると2倍程度の測定速度が出るので、正確性よりも早さを求める場合にはオフにしましょう。
3.デジタルマルチメーターの使い方
3-1.基本的な使い方
3-3-1.電圧測定
- ロータリースイッチを回して、直流(DC)か交流(AC)にレンジに設定しましょう。電圧のレンジには多くの場合『―、~』+『V』などの表示がされています。この『―』が直流を意味し、『~』が交流を意味しています(メーカーによって異なる)。
- ロータリースイッチでは直流(DC)と交流(AC)の選択ができない場合は、セレクトボタン(SEL)やシフトボタン(SHIFT)があるはずです。操作して直流(DC)か交流(AC)を選択してください。
- テストリードを使って電圧発生部を計測します。
3-3-2.電流測定
- ロータリースイッチを回して『―、~』+『A』にレンジを合わせましょう。µA(マイクロアンペア)とmA(ミリアンペア)に分かれていることがあるので、調べたい方に合わせてください。
- SELECTやSHIFTなどで直流(DC)か交流(AC)に合わせましょう。
- テストリードを使って電流を計測します。
3-3-3.抵抗測定
- ロータリースイッチを回して『Ω』のレンジに合わせましょう。
- 測定回路の電源を切ります。
- テストリードを使って測定回路に接続し、抵抗値を計りましょう。
3-3-4.導通検査
- ブザーマークにレンジを合わせましょう。
- テストリードを使って導通をチェックします。
3-2.基礎用語のまとめ
- DC……直流電気
- AC……交流電気
- V……電圧、ボルト(Volt)
- A……電流、アンペア(Ampere)
- mA……ミリアンペア(1mA=1000µA)
- µA……マイクロアンペア(1µA=0.001mA)
- Ω……抵抗、オーム(Ohm)
3-3.使う際の注意点
間違った使い方をすると故障や事故の原因となります。たとえば、抵抗レンジのままで電流や電圧を測ると、故障してしまうでしょう。
今回ご紹介した使い方はあくまで一例です。必ず使用するデジタルメーターの説明書を読んで使いましょう。特に電流測定の際は実際に電流が流れていますので、場合によっては事故が発生します。ですから、正しい方法で注意深く使用してください。
4.デジタルマルチメーターの導入・処分について
4-1.選び方のポイント
選び方のポイントとしては、自分がどのぐらいの性能を欲しているのかが重要でしょう。たとえばマイコンの制作ぐらいなら数万円もする高性能のものを買わなくても、数千円程度で十分です。あまったお金をオシロスコープにつぎ込んだ方が有意義でしょう。
そうではなくて、研究室などで専門的に使用する場合は、高性能のものを購入した方が無難。なぜなら、正確性が特に求められるからです。
まずは、自分がどの程度の製品を求めているのか自問してみましょう。
4-2.価格について
価格は安いものでは数千円。高いものであれば10万円近いものまで流通しています。中古の場合は、状態にもよりますが半額以下で購入できることもあるでしょう。また、レンタルの場合は、定価の1~2割程度の値段で借りることが可能です。
4-3.買い取りについて
中古で販売されていることから分かるように、デジタルマルチメーターは買い取りが可能です。買い取り価格は状態にもよりますが、だいたい定価の2~3割程度でしょう。ただし、非常に状態がいい場合(未使用品など)は5割以上の高値で買い取ってもらえることもあります。
依頼先に関しては、測定機器を専門に売買している業者を選びましょう。なぜなら、価値の分からない業者に依頼しても、二束三文で買いたたかれてしまうリスクがあるからです。
4-4.処分の際の注意点
デジタルマルチメーターのような、専門性の高い機械は買い取り業者があまりいません。そのため、多くの方は、まだ使える状態であっても破棄してしまうことがほとんどでしょう。
しかし、デジタルマルチメーターは高価な商品のものも多いので、意外にも『ほしくても買えない』という人がいます。つまり、需要は存在しているということです。
処分を考える際には、まず買い取ってもらえるかどうかを確認してからでも遅くありません。安易に廃棄しないように注意してくださいね。
5.デジタルマルチメーターのQ&A
Q.安いものでも正確に測れますか?
たとえ安いものでも、しっかりと計測は可能です。しかし、やはりハイグレード品に比べれば精度は下がります。また、機能の面でも劣るでしょう。
研究室などで専門的に使用するのであれば、最低でも1万円以上の製品を購入するようにした方が賢明です。
Q.デジタルテスターとデジタルマルチメーターの違いは何ですか?
基本的には同じものと思ってください。ただし、デジタルテスターの方が機能面で劣っていることが多いので、この部分で区別することも可能です。もっとも、必ずしもデジタルテスターという名称だと劣っているというわけではないので注意しましょう。
Q.静電気を測定することはできますか?
デジタルマルチメーターでは、基本的に静電気を測定することはできません。静電気を測定するには、静電気測定器という専用の機械を使う必要があります。
Q.性能表に書かれている『6 1/2桁』とは何なのですか?
性能表などに書かれている6 1/2桁や7 1/2桁という表示は、デジタルマルチメーターの読み出しに表示される桁数のことです。整数は0~9の値で表される桁数のこと。分数は0と1だけで表される桁のことです。
つまり、6 1/2桁であれば、0~1,999,999の正負の値で表示できるということになります。
なぜ、このようなことをしているかというと、誤解を避けるためです。たとえば、6 1/2桁を7桁と表記してしまうと、9,999,999まで表示可能と誤解されるリスクがありますよね。そのため、このような一見分かりにくい表記となっているのです。
Q.使いこなすコツはありますか?
1番大切なのは説明書をしっかりと読むことです。デジタルマルチメーターは基本機能こそ同じですが、製品によって操作方法は異なります。ですから、勘や経験から適当に操作すると思わぬ事故や故障を引き起こしてしまうことがあるのです。
使用前には必ず使い方を参照するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回はデジタルマルチメーターについてご紹介しました。デジタルマルチメーターは電気工事や電気工作、研究室など、さまざまな場面で活躍してくれる機械です。しかし、使い方を間違えると簡単に壊れてしまいますし、場合によっては事故を引き起こすこともあります。必ず、正しい使い方を学んでから扱うようにしましょう。