電気炉はどんなときに使うもの?購入や処分・リサイクル方法は?
「電気炉を購入したいけど、どれを選べばいいのかわからない」「電気炉の処分方法がわからない」など、電気炉の購入や処分で悩んでいる方は多いでしょう。工業用として使われることが多い電気炉は、金属・セラミック・ガラスの溶解や焼成に必要な機械です。用途に合った電気炉の購入や要らなくなったものを正しく処分するためには、ある程度の知識を持っておかなければなりません。そこで、本記事では、電気炉の基礎知識や種類・購入・処分方法などを詳しく説明します。
この記事を読むことで、電気炉を購入・処分するために必要な知識と情報を手に入れることができます。電気炉について知りたい方や購入・処分を考えている方は要チェックです。
1.電気炉の基礎知識
用途に合った電気炉を選び正しく使うためには、基礎知識を習得することが大切です。電気炉とは何なのか、構造と原理・目的や用途など詳しく説明します。購入前にぜひチェックしてください。
1-1.電気炉とは
電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、金属材料を加熱・溶解する炉を電気炉といいます。工業地帯でよく見る高炉(こうろ)は、鉄鉱石を熱処理して鉄を取り出す炉です。電気は一切使いません。電気が用いられるようになったのは20世紀前半ごろで、それまでは高炉(こうろ)が一般的でした。高炉(こうろ)は鉄鉱石が主原料で、電気炉は鉄スクラップです。現在でも高炉(こうろ)が主に動いていますが、電気炉もおよそ30%と普及しつつあります。
1-2.電気炉の構造・原理
一般的な電気炉は箱型です。発熱体が中心部にあり、まわりに断熱材と空気断熱層が取り囲んでいます。扉部をあけて電気炉の中に金属材料を入れる仕組みです。電気炉の加熱部は炉体と呼ばれています。加熱部を保温する断熱材、温度制御装置、電源部を組み合わせることで電気炉の完成です。ほかに、ガス導入口や排気口、炉心管、昇降装置などがあります。炉の中を電気で熱に変換し、温めることで金属材料を加熱・溶解できるのです。
1-3.電気炉の目的・用途
電気炉で加熱・溶解した金属材料によって、鋼製品を製造します。鋼製品は建築・土木・産業機械・造船などの材料として使用されるでしょう。精錬するときに合金を組み合わせれば、自動車や建築機械の部品にもできます。また、趣味の陶芸や陶器の焼成用としても使われている機器です。日用品から工業用・宇宙開発用ロケットの部品まで幅広く使われています。
1-4.電気炉の必要性
金属材料を加熱し溶接するのは簡単ではありません。また、電気炉は鉄スクラップを原料にしているため、環境保護・リサイクルの観点から重宝されているものです。エコ活動が注目されている今、電気炉は大きな役割を担っているといえるでしょう。さらに、電気炉は高炉(こうろ)に比べると二酸化炭素の発生量が少ないのが魅力的です。今後も需要が高くなる可能性は十分にあり得ます。
2.電気炉の種類
電気炉の種類はさまざまですが、使用する熱や電流の違いで分類できます。電気抵抗炉・低周波誘導炉・高周波誘導炉・アーク炉の4種類について説明しましょう。
2-1.電気抵抗炉
電気抵抗炉はジュール熱を利用する電気炉のことです。ジュール熱は電流によって導体内に発生する熱を指しています。導体に与えられた電気エネルギーが熱に変換されるのです。ニクロム・カンタルなどの線またはリボンをコイルに巻いたり、黒鉛などの棒を輪状に配置したりします。
2-2.低周波誘導炉
低周波誘導炉は電磁誘導電流を利用している電気炉です。変圧器の二次側を1回巻き、一次側を多重巻きにして一次側に電流を流します。そうすると、巻いた分だけの倍電流が流れる仕組みです。そして、コイルはジュール熱によって加熱されます。
2-3.高周波誘導炉
高周波電磁誘導によって起こる渦電流を用いて加熱するのが高周波誘導炉です。水冷銅管をコイルに巻き、高周波電流を流します。そして、コイルの中心に金属を置くと、金属内部に渦電流が生まれて加熱される仕組みです。
2-4.アーク炉
アーク炉はアークの高熱を利用した電気炉のことです。アークとは2つの電極間で放電させることで生まれるプラズマの一種を指しています。溶接に使用するアークは、数十アンペア~千アンペアと非常に大きな電流が流れるのです。
3.電気炉を購入する前に知るべきこと
電気炉を購入しても使い方がわからなければ意味がありません。購入前に、基本的な使い方や手順・メーカー・平均価格など必要な知識を習得しておきましょう。
3-1.電気炉の主な使い方と手順
まずは、電気炉の扉を開き、炉内に試料を入れます。衝撃や振動を与えると炉内の断熱材がはがれるため、やさしく扉を開きましょう。そして、試料を炉床板の上に置いてください。このときは天井にぶつからないよう注意しましょう。扉を閉め、電気コードを電源に接続しオンにします。炉内が設定温度に到達するとヒーターが制御され、炉内が恒温保持される手順です。種類やメーカーによって、多少使い方が異なるでしょう。使用前に必ず取扱説明書を一読してくださいね。
3-2.メーカーについて
日本の代表的な電気炉メーカーは東京製鐵・JFE条鋼・新日鐵住金グループ系メーカー・中山製鋼所・ヤマトスチール・中部鋼鉄・朝日工業です。高炉(こうろ)メーカーも電気炉メーカーに参入し、シェア拡大を目指しているところがあります。
3-3.平均価格
電気炉のサイズや機能によって価格が異なるでしょう。家庭用コンセントでも使用できるものは、4万~20万円以内で購入できます。使用用途は限られますが、家庭で使うのなら小型でも十分です。工業用になると大型になるため、数十万が目安だと思ってください。30万~数百万円はかかるでしょう。
3-4.耐用年数
電気炉の耐用年数はおよそ10年です。ただし、使用頻度や環境によっては数年で寿命を迎えることもあります。正常にスイッチが作動しなかったり、きちんと加熱・溶解されていなかったりとトラブルが起きるでしょう。長く使い続けるためには使用後のお手入れや定期点検が必要です。
3-5.注意点
電気炉を使う際、コンセントに接続して電流を流さなければなりません。電気炉の容量によって定格電流が決まっています。必ず定格電流以上の余裕のある電流に接続してください。余裕のない電源へ接続してしまうと、内部の配線や電源コードから発火する恐れがあります。また、運転中や運転後、炉内が熱い状態のときに移動してはいけません。
4.電気炉の購入について
電気炉を新しく購入する場合、どのような種類を選べばいいのでしょうか。商品選びのポイントや購入場所・中古品・レンタルについて詳しく説明します。
4-1.商品選びのポイント
電気炉を選ぶ際は使用目的を明確にしておきましょう。用途によって選ぶべき機能が変わってきます。たとえば、試料の形を自由に変化させたい場合、最高温度が3000度まで上がるカーボンを発熱体とした電気炉がいいでしょう。小試料や局部的に温度を上げたいときは、金属発熱体を使用したものがおすすめです。発熱体・ヒーター・構造を踏まえつつ、使用目的に合ったものを選んでください。どうしてもわからない場合は、電気炉に詳しい業者スタッフに尋ねるといいでしょう。
4-2.購入場所
電気炉の購入は、取り扱っているメーカーや店舗・業者、またはインターネットなどの方法があります。メーカーのホームページからカタログを取り寄せることも可能です。直接店舗に行けば実物を見ることはできますが、すべての電気炉を確かめることはできません。また、近くに販売店がないところもあるでしょう。そんなときは、インターネットで購入するのも選択肢の1つです。
4-3.中古品について
安い価格で手に入れたい方は中古品がおすすめです。電気炉などの機器の買い取りをしている業者の中には、中古品を販売しているところもあります。中古品=状態が悪い・すぐに壊れるとイメージを持っている方は多いでしょう。状態のいい中古品がそろっている業者もあるので安心してください。大切なのは業者選びなのです。優良業者はいい状態の中古品がそろっています。後ほど、【5-4.業者選びのポイント】で詳しく説明しましょう。
4-4.レンタルについて
購入ではなくレンタルも1つの選択肢です。「お試しで使ってみたい」「一定期間だけ欲しい」という方はレンタルのほうがお得でしょう。レンタルを利用する場合は、ルールやレンタル料金など細かい点を確認してくださいね。
5.電気炉の処分・リサイクルについて
まだ、使える電気炉をそのまま捨てるのは非常にもったいないことです。電気炉など機器の中には活用できる資源が豊富に含まれています。資源を無駄にしないためにも、リサイクルや買い取りについて把握しておきましょう。
5-1.リサイクル業者について
資源の再利用やリユースをおこなっているのがリサイクル業者です。リサイクル業者の中には電気炉などの専門機器を積極的にリサイクルしているところもあるので安心してください。亜鉛や鉄など貴重な資源に分解し、再利用します。捨てるよりもリサイクルしたほうが地球にやさしい方法で処分できるでしょう。
5-2.買い取りについて
リサイクル以外にも買い取ってもらう方法があります。電気炉が正常に稼働すれば、買い取ってもらえるでしょう。ただし、製造月日から何十年も経過しているものは買取額がつかないケースもあります。まずは、買い取りしてもらえるかどうか査定に出してみてください。重い電気炉でもスタッフが現場にやってきてその場で査定してくれます。
5-3.高額査定のポイント
せっかく買い取ってもらえるのなら、高い価格で取り引きしたいですよね。中古品の買取額は販売価格のおよそ5%が目安だといわれています。高価買取を期待したい方は、以下のポイントに注目してください。
- 外装をキレイに掃除する
- 取扱説明書などの付属品を一緒にする
- 電気炉に知識のある業者に依頼する
- ほかの機器も一緒に査定に出す
- 複数の業者から出た査定額を比較する
5-4.業者選びのポイント
業者の中には、適切でない価格で買い取ったり、不法投棄をしたりする悪質な業者が存在します。安心して購入・処分するためにも業者選びのポイントをしっかり押さえておきましょう。
- 電気炉などの機器に詳しい、説明がわかりやすい
- 丁寧かつスピーディーな対応
- 中古品の取扱量が多い
- 古物商許可を取得している
- ホームページに住所と電話番号(固定番号)が記載されている
5-5.注意点
「面倒だから」と適当に業者を選んではいけません。悪質な業者を見極めるためには、慎重に選ぶ時間が必要です。業者選びには時間をかけてください。また、複数の業者を比較するといいでしょう。比較することで良い点と悪い点が見えてきます。自分のニーズと一致した業者が選択できるでしょう。
6.電気炉にかんしてよくある質問
電気炉にかんしてよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.電気炉の置き場所に適しているのは?
電気炉の設置場所は、温度変化やホコリ・腐食性ガスが少ない場所が好ましいです。また、床面が平らになっている場所を選びましょう。傾いてがたつく場所は機器が転倒します。設置場所によっては電気炉の寿命が短くなるでしょう。必ず適した場所に置いて使ってください。
6-2.電気炉のお手入れとは?
小さいホウキやティッシュペーパーでついている粉を集めてください。集めた粉を掃除機で吸い取った後、ぬらして固くしぼったぞうきんでやさしくふきましょう。炉内は非常にデリケートなのでやさしくお手入れをすることが大切です。2カ月に1回ほどお手入れをすれば、長持ちしますよ。
6-3.自分でできる日常メンテナンスとは?
使用する前に、電源部・炉内・外装やパネルの確認をしてください。電源部やコンセントにホコリがたまっていないか、炉内にチリや試料のカスが落ちていないか、外装・操作パネルの汚れが目立っていないか要チェックです。炉内のカスは掃除機で吸い取り、外装・操作パネルの汚れは中性洗剤を薄めて布でふき取りましょう。電源部やコンセントのがたつきがある場合はメーカーのに点検を依頼したほうがいいです。
6-4.保管方法が知りたい
保管時は必ず電源コードをコンセントから抜いておきましょう。コード部分を引っ張るのではなく、プラグ部分をしっかり持ってくださいね。扉をしっかり閉めて、火の気のない場所に保管します。火の気のある場所は火災の原因になるため置かないように気をつけてください。
6-5.電気炉に安全装置はついているのか?
ほとんどの電気炉には安全装置がついています。過大な電流が流れたときは電源ブレーカーが作動し、全回路が遮断するでしょう。もし、安全装置が作動したときはすぐメーカーに連絡してください。自分で扱うのはNGです。
まとめ
いかがでしたか? 電気炉は電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、金属材料を加熱・溶解する機器です。家庭用のものもありますが、主に建築や製造工場などで使われています。ものを生み出す現場では必要なものです。電気炉でも発熱体・ヒーター・構造・サイズなどいろいろな種類があります。新しいものを購入するときは何のために使うのか、使用目的を明確にしてください。要らないものを処分する場合は、リサイクルまたは買い取りを利用しましょう。電気炉の中には鋼・亜鉛など再利用できる資源がたくさん含まれています。そのまま処分するのは非常にもったいないことです。電気炉の知識をきちんと習得しておけば、納得のいく購入・処分ができますよ。