クリーンベンチの役割は? 基本的な使い方や買取・処分方法

微生物を扱う研究や組織培養などの実験では、異物が混入すると台無しになってしまいます。いかに、無菌状態で実験ができるかどうかがポイントとなるのです。そこで、「クリーンベンチ」と呼ばれる装置が大活躍します。無菌状態が維持できるクリーンベンチは、研究室に必要不可欠な装置といっても過言ではありません。

そこで本記事では、クリーンベンチの基礎知識や使い方・購入と買取方法などについて詳しく説明します。

  1. クリーンベンチの基礎知識
  2. クリーンベンチの基本的な使い方や価格
  3. クリーンベンチの購入について
  4. クリーンベンチの処分・リサイクルについて
  5. クリーンベンチに関してよくある質問

この記事を読むことで、クリーンベンチを正しく扱うために必要な情報や購入・処分方法がわかります。気になっている方はぜひチェックしてください。

1.クリーンベンチの基礎知識

購入・処分方法について知る前に、クリーンベンチの基礎知識を把握しておかなければなりません。種類・構造・使用用途などをしっかり踏まえたうえで購入・処分を検討しましょう。

1-1.クリーンベンチとは?

細胞・微生物を取り扱う際に、雑菌やホコリなどの異物混入を防ぎ、無菌状態で作業するための装置がクリーンベンチです。似ている装置に安全キャビネットと呼ばれるものがありますが、クリーンベンチは内部を陽圧(ようあつ)にしています。そのため、空気をそとに押し出す形で無菌状態をつくることができるのです。

1-2.クリーンベンチの種類

クリーンベンチの種類は作業内容に応じてさまざまな機能が付加されています。主な種類を以下にピックアップしているのでぜひチェックしてください。

  • 装置組み込み型:作業台を取りはずして床置きの装置が組み込まれている
  • 乾燥型:赤外線ランプがついており、作業台で乾燥がおこなえる
  • 無振動型:作業台と本体が離れており、振動が直接伝わらない
  • ライトテーブル型:アクリルやガラスなどを組み合せた作業台面で、蛍光灯が組み込まれている
  • 給排水型:作業台の一部、または全面が流しになっており、正面に給水栓がある
  • 排気型:作業台の一部、または全面で排気可能
  • 循環型:清浄空気を循環させる

1-3.クリーンベンチの構造

基本的な構造は土台となる机・カバーする前面と屋根・左右の壁でできているボックスです。左右の壁の向こうがわにフィルターと空気の吹き出しがついています。普通は手だけを突っ込んで操作をおこなうものです。空気の吹き出し方には正面の壁から手前に向かって吹きつける水平送風と、天井面から下に向けて吹きおろす垂直送風があります。また、クリーンベンチの構造はJIS B9922の規定の中で細かい点が決められているのです。

JIS B9922の規定

  • 保守・点検および整備が容易にできる構造
  • 作業空間の壁面は、容易に剥離(はくり)およびサビを発生しないもの
  • ろ過されていない空気が作業空間に流入しない構造
  • クリーンベンチ本体が接地可能な構造
  • メインのエアフィルターはHEPAまたはULPAフィルターでなければならない
  • フィルターは通常の空気条件において、容易に変質および腐食しないもの。保守は整備・交換のために容易に脱着できるものとする
  • 酸・有機溶剤・生物粒子・有毒ガスなどを取り扱う業種の場合、これらを含んだ空気が所定の経路から排気できる構造
  • 防爆構造のものはJIS C 0903に規定する構造
  • 照明灯と殺菌灯を備えているものは受渡当事者間の協定がない限り、同時に点灯してはならない

1-4.クリーンベンチの目的・用途

作業のためのスペースを無菌状態にしたいときに使います。限られたスペースの中で、必要な範囲だけを無菌状態にしたいときに最適な装置でしょう。大学や製薬会社の研究室・農業関連・電子部品・精密機械・医薬品などの分野で活用されています。

1-5.必要性とメリット

部屋全体を無菌状態にする無菌室など従来のクリーンルームは初期費用とランニングコストに大きな負担がありました。しかし、クリーンベンチは必要な空間だけ無菌状態にできます。そのため、コスト負担が少なく、さらに、清浄度・温度と湿度管理が対応可能です。省コストかつ小スペースで作業ができます。

クリーンベンチは、雑菌やホコリなどの異物混入を防ぎ、無菌状態で作業ができるようにする装置なんですね。
はい。多くの研究室で導入されています。

2.クリーンベンチの基本的な使い方や価格

クリーンベンチを正しく使うためにも基本的な使い方を把握しておきましょう。ほかにも、付属するものやメーカー・価格・耐用年数について詳しく説明します。

2-1.基本的な使い方

クリーンベンチの使い方は簡単です。手をキレイに洗った後、アルコール消毒をして、クリーンベンチの中で使うものもすべて消毒します。そして、前面のガラスをすべて閉じた後に無菌操作をオンにしてください。そうすれば、クリーンベンチの中が無菌状態になります。後は差し込み口から手を入れて作業をおこなうだけです。普通は手を入れて作業をおこないますが、中には正面があいているものやシャッターをおろすタイプがあります。シャッターがある場合は、作業できる程度までおろしましょう。

2-2.付属するもの

クリーンベンチの種類によって付属するものが異なります。基本的に天井や壁が不透明になっているため、照明装置がついているクリーンベンチがほとんどです。また、内部の減菌用として殺菌灯を別につけていることもあります。操作時は火炎減菌をすることが多いため、ガスバーナーや点火用のフットスイッチがついているものもあるのです。

2-3.メーカーについて

代表的なメーカーといえば、和研薬株式会社・日本エアーテック株式会社・イプロス製造業・日本医化器械製作所・日立産機システムなどがあげられます。日立産機システムは省エネ、日本医化器械製作所は医療分野に優れているというように、メーカーによって特徴が異なるでしょう。使用目的に合った種類を選ぶためにも、複数のメーカーを比較してみてください。

2-4.価格について

本格的な研究・実験に使われるクリーンベンチは機能性に優れているため、100万~200万円が平均価格です。卓上型のクリーンベンチはコンパクトサイズなので50万円程度で購入できます。サイズ・機能・種類によって価格はさまざまでしょう。

2-5.耐用年数

クリーンベンチ本体は10年~15年が耐用年数です。しかし、空気清浄のために使われるフィルターの寿命は1年~3年と短いため、定期的に交換しなければなりません。フィルターが正常に機能しなくなると、無菌状態も不安定になります。

2-6.注意点

クリーンベンチを使えば無菌状態が保証されるというわけではありません。作業の仕方によっては無菌状態でなくなる可能性があります。たとえば、そとから持ち込む器具です。減菌されていても外気に触れたとたん無菌ではなくなります。そのため、さまざまな器具を扱う場合はきちんと無菌状態の手順を踏まえておかなければなりません。

クリーンベンチは高価なんですね。
はい。その分長持ちします。

3.クリーンベンチの購入について

目的に見合ったクリーンベンチを購入するためにも、購入方法・商品選びのポイントなどをしっかりチェックしておきましょう。

3-1.購入方法

メーカーのホームページや通販サイト・販売店などで購入できます。最初は何を選べばいいのかわからないと思うので、さまざまな商品をチェックするところから始めましょう。購入に迷ったときはクリーンベンチに詳しいスタッフ・メーカーの担当者に尋ねるのも1つの方法です。

3-2.商品選びのポイント

商品選びの前に、使用目的を明確にしておいてください。何のために使うのか目的をハッキリさせておけば、適切な商品が見つかりやすくなります。また、大型・小型(卓上タイプ)・小型(簡易卓上タイプ)などサイズも幅広いものです。以下に商品選びのポイントをまとめてみました。

  • 使用目的に合っているか
  • 設置スペースに合ったサイズか
  • 予算内に収まるか
  • 洗浄度・気流・重量
  • 集塵(しゅうじん)効率・効果などの性能

3-3.中古品について

購入費用をできるだけ抑えたい方は中古品がおすすめです。中古品を中心に取り扱っている専門店では、状態のいいものも豊富にそろっています。「中古品はすぐに壊れる」と思う方は多いでしょう。優良業者は状態のいい商品が充実しているため、業者選びがポイントになるのです。後ほど、【4-4.業者選びのポイント】にて詳しく説明します。ぜひ中古品も検討してみてはいかがでしょうか。

3-4.レンタルについて

限られた期間で使用する場合はレンタルがお得です。購入するよりも安く、お試し感覚で利用できます。レンタルは使用期間が限られており、期間によって費用も異なるでしょう。レンタルを利用する場合は見積もりをきちんと確認してくださいね。

クリーンベンチは購入だけでなくレンタルもできるんですね。
はい。数回しか使わないならば、レンタルもおすすめです。

4.クリーンベンチの処分・リサイクルについて

クリーンベンチの処分やリサイクルはどのようにすればいいのでしょうか。リサイクル業者や中古市場の需要・買い取り・業者選びのポイントなどについて説明します。

4-1.中古市場の需要

クリーンベンチなどの理化学機器の中古需要は高まっています。「安く購入したい」という方が増えてきていることもあり、中古品に注目が集まっているのです。また、エコ活動に力を入れる企業も多く、ものを再利用する働きが活発化しています。そのため、中古品の使用率も年々あがっているのです。

4-2.高額査定のポイント

高価買い取りを期待したい方は、以下の高額査定ポイントをチェックしてください。

  • 査定前にキレイに掃除する
  • 取扱説明書や照明装置など購入時についていたものを用意する
  • 製造月日・メーカー・種類などの詳細を把握する

本体をキレイにするだけでも査定員の印象がよくなります。汚い状態よりもキレイな状態のほうが高値がつきやすいものです。付属品はもちろんのこと、製造月日やメーカー・種類などの詳細もきちんと把握しておきましょう。そうすれば、査定がスムーズにすすめられます。

4-3.業者選びのポイント

業者選びで悩んだときは、以下のポイントに注目してみてください。

  • 理化学機器や中古品に詳しいか
  • 丁寧かつスピーディーな対応か
  • 中古品の取扱量が豊富か
  • 古物商許可を取得しているか
  • ホームページに固定電話番号と住所が記載されているか
  • 見積もり内容に不備がないか

4-4.お問い合わせ

「買い取ってもらえる状態かわからない」「買い取り額はいくらになるのか」などと悩みがある場合は、業者に問い合わせてください。

クリーンベンチは売却もできるんですね。
はい。まだ十分に使えるクリーンベンチが不要になったら、売却を考えましょう。

5.クリーンベンチに関してよくある質問

クリーンベンチに関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.バイオクリーンベンチとは?
微生物の取り扱いに適しているのがバイオクリーンベンチです。主に循環気流を使っているため、その一部が排気でき、作業台から外部への流出を防ぎます。つまり、微生物の無菌操作と同時に外部への飛散防止が可能です。

Q.洗浄度とは?
クリーンベンチ内の空気を常に清潔にできるか、無菌環境を維持し続けられるかどうかが洗浄度で示すことができます。洗浄度はクラス100(1立方フィートあたり0.5マイクロメートル以上の粒子数が100以内)とアメリカ合衆国の規格に基づいているのです。

Q.クリーンベンチは定期検査が必要か?
きちんと無菌状態を維持するためにもクリーンベンチの定期検査をしましょう。適切な風量・風速を確保していても、肉眼では確認できない異物が入っている恐れがあります。定期的な性能をチェックしておけば、異物混入の防止が可能です。定期検査はメーカーで有償にて実施されています。

Q.感染症のある病原体を取り扱う際の注意点は?
操作者に触れないようにすることと外部に出ないようにしないことの2点に注意してください。作業者に風が流れるタイプのクリーンベンチは、感染の危険があります。そのため、安全キャビネットを使うなど工夫が必要なのです。また、扱うものによって適切な構造を選ばなければなりませんね。

Q.培養などの無菌操作に合っている種類は?
培養などの無菌操作をおこなう場合、垂直送風型のクリーンベンチがおすすめです。水平送風の場合はクリーンベンチ内に入っている手や腕、器具の周辺に空気がたまってしまいます。そのままでは十分な無菌処理ができません。

まとめ

クリーンベンチは限られた空間を無菌状態にできる装置です。無菌室などの従来のクリーンルームは初期費用やランニングコストが高く、導入を諦めるケースがありました。しかし、必要なスペースだけ無菌状態にできるクリーンベンチはコストを抑えることができます。小スペースでも設置できる卓上型も出てきているため、置き場所にも困りません。ただし、クリーンベンチにも性能に違いがあり、使用目的や対象物に合ったタイプを選ぶ必要があります。事前にクリーンベンチの基礎知識を把握しておけば、ベストな種類が選べるでしょう。