3Dプリンターとはどんな機器? 基本知識から購入・処分方法まで解説
造形方法の多様化がすすむ中、最近は3Dプリンターと呼ばれる造形機器が注目されています。一般的なプリンターは通常の紙に平面的に印刷しますが、3Dプリンターは立体を造形するものです。そのため、頭の中にイメージしていたものをより具体的かつ立体的につくることができます。しかし、3Dプリンターにもさまざまな方式があるため、基礎知識を身につけてからでないと目的に合った種類が買えません。そこで、本記事では、3Dプリンターの基礎知識や種類・原理・購入と処分方法などについて説明します。
この記事を読むことで3Dプリンターの基礎知識を身につけ、使用用途に合った種類の購入や正しい処分ができます。気になっている方はぜひチェックしてください。
1.3Dプリンターの基礎知識
納得できる購入・処分をするためにも3Dプリンターの基礎知識を身につけることが大切です。3Dプリンターの概要や構造・種類などについて詳しく説明します。
1-1.3Dプリンターとは
3Dプリンターとは、一体どのような機器なのでしょうか。
1-1-1.概要
3Dプリンターとは3DCADや3DCGデータをもとにして立体を造形する機器のことです。データのもとになる3DCADはコンピューターを使って立体的な設計をします。3DCGは平面上の情報(2次元)から立体的な3次元空間情報に変換する3次元コンピューターグラフィックスを表しているのです。
1-1-2.歴史
3Dプリンターを生み出した人は実は日本人です。1980年に名古屋市工業研究所の小玉さんという方が開発しました。しかし、当時の日本では実用化に興味を持つ企業が現れず、小玉さんが出願した特許の期間制限が過ぎ、失効となったのです。そして、その後に世界最大の3Dプリンター会社「3D Systems」が特許を取得します。3Dプリンターのブームは、低価格化が実現できた2010年代からです。家庭用の3Dプリンターが出始め、気軽に使えるようになりました。
1-1-3.構造・原理
一般的に、3Dプリンターを使用する前に3DCADや3DCGでデータを作成しなければなりません。つくりたい形のデータを作成し、そのデータをもとにして一層一層、用いる材料を積層することで造形物を製作します。造形方式はさまざまな種類があり、方式によって使用する材料・造形物の特性が異なるのです。
1-1-4.種類
3Dプリンターの種類は造形方式によってわけることができます。造形方式は光造形法・粉末法・熱溶解積層法(FDM法)・シート積層法・インクジェット法の5種類です。
- 光造形法:溶融樹脂を紫外線で硬化する方法。3Dプリンターの起源ともいわれている造形方式でもあり、製造業でよく使われている。
- 粉末法:粉末を造形テーブルに敷き詰めてレーザーや接着剤で固める「粉末石膏(せっこう)造形」と金属や樹脂の粉末を敷き詰めてレーザーで溶融し固める「粉末焼結造形」がある。
- 熱溶解積層法(FDM法):3Dプリンターの主流となる造形方式。リール状に巻かれている樹脂をヒーターで加熱→溶融→押し出しすることで造形する
- シート積層法:シートを積層させて形状をつくる造形方式。粉末法の基材をシートに置き換えたもの
- インクジェット法:インクジェットプリンターの原理を応用した造形方式。液化した材料・バインダーを噴射して積層させ形状をつくる
1-2.目的と用途
3Dプリンターは幅広い分野で活用できます。たとえば、会社のプレゼンで使う模型です。プレゼンを成功させるために模型をつくることがありますよね。3Dプリンターを使えば、簡単に模型がつくれるのです。また、機能・構造・開発商品などの設計検証や金型・砂型製作などの製造現場でも活躍しています。
1-2-1.何ができるか
頭の中にイメージしている造形をデータ化して、立体(3次元)で製作できるのが3Dプリンターです。より現物に近い造形が製作できるため、商品開発の段階におけるサンプルづくりに最適でしょう。
1-2-2.どこで使うか
よく使われているのが製造業です。商品を開発する際、試作やデザインなど何度もくり返しながら検討します。用紙ではわからない部分も立体的にすることでわかるようになるのです。また、研究室や工場でも使われています。家庭用の3Dプリンターを使えば、自宅でも簡単に利用可能です。
1-3.必要性・メリット
製造業において3Dプリンターは必要不可欠な機器になるでしょう。データやパソコンのモニターでは気づかないデザイン上のミスに気づき、3Dプリンターの使用によって開発期間が短縮できます。また、開発期間の短縮は業務の効率化や試作・デザインなどの開発コスト削減も可能です。製造業以外にも、幅広い分野でメリットが期待できます。
2.3Dプリンターの主な使い方や価格について
3Dプリンターを上手に使うためにも、基本的な使い方や専門用語・耐用年数などを把握しておかなければなりません。それでは、早速見ていきましょう。
2-1.基本的な使い方
最初に、3Dプリンターで形状をつくるためのデータが必要です。データ作成には3DCADと3DCGソフトを用意しなければなりません。これらのソフトを使ってデータを作成し、STLファイル形式に変換します。STLファイルをフロントエンドと呼ばれるソフトに読みこませた後、スライサーと呼ばれるソフトで輪切りにしたデータへ変換してください。そして、3次元形状データからプリント方法を指示する「G-Code」を作成します。G-Codeの作成が完了すると、フロントエンドソフトから3Dプリンターへデータが送られる仕組みです。3Dプリンターでは、ファームウェアがG-Codeを解釈し、印刷が始まります。
2-2.専門用語
3Dプリンターを使用するためには専門用語をいくつか理解しておかなければなりません。主に使われる専門用語を以下にピックアップしてみました。
- 積層ピッチ:造形を積みあげていく間隔。薄い層を何度も積みあげることで造形していく
- STL形式:3Dデータを保存するファイルフォーマット
- 3Dスキャナー:物体を3Dオブジェクトとして読みこむための装置
- フィラメント:FDMやマテリアルジェッティングなどの3Dプリンター出力に使うリール状の樹脂
2-3.最近の傾向
最近は次々と新しい性能や特徴を持つ機種が登場しています。代表的な3DプリンターはMakert、Cubeシリーズ、RepRapが挙げられるでしょう。組み立て式から多機能なソフトウェアがついているタイプなど幅広い種類があります。また、家庭でも気軽に使用できるものも登場しており、3Dプリンターを使う場面が幅広くなってきているといってもいいでしょう。
2-4.平均価格
3Dプリンターの平均価格は3万~400万円と幅広い傾向があります。なぜなら、家庭用の3Dプリンターも普及しつつあるからです。気軽に使えるタイプは数万円から、業務用で使うタイプは数百万円が妥当になるでしょう。中には1000万円以上するものもあります。
2-5.耐用年数
一般的な工業機械は耐用年数が10年~15年といわれています。3Dプリンターもそのくらいだと考えてください。ただし、使用頻度や環境によっては早く寿命を迎えることもあります。きちんと正しい方法で使い、お手入れをきちんとしておけば15年以上使い続けられる可能性もあるでしょう。
2-6.注意点
3Dプリンターの造形方式によって使用できる素材が異なります。以下に造形方式ごとの使用する素材をまとめましたのでぜひチェックしてください。
- 光造形法:エポキシ系・PPライク・ABSライクなど
- 粉末法:接着剤は石膏(せっこう)、レーザーはナイロン・ステンレス・チタンなど
- 熱溶解積層法(FDM法):ABS・PLA・ナイロンなど
- シート積層法:硬化性樹脂・光硬化樹脂など
- インクジェット法:光硬化性樹脂・アクリル系・ABSライク・PPライク
3.3Dプリンターの購入について
3Dプリンターを購入したいときは一体どうすればいいのでしょうか。購入の基礎知識について説明します。
3-1.購入方法・場所
3Dプリンターは大手家電量販店で販売しています。実際にサイズや機能が確認できるため、失敗を防ぐことができるでしょう。3Dプリンターに深い知識がなくても、詳しいスタッフに尋ねることができます。また、インターネットでも購入可能です。通常価格よりも安く販売している可能性もあります。しかし、直接商品を見ることはできないので注意しなければなりません。
3-2.商品選びのポイント
まずは、何のために3Dプリンターを使うのか「使用目的」をハッキリさせておきましょう。どんな造形をつくるのかによっても造形方式が変わってきます。造形方式によって使用できる素材も異なるため、使用目的を明確にしておいたほうが選びやすくなるのです。また、メーカーや保証期間などにも注目しましょう。
3-3.中古品について
「できるだけ購入費用を抑えたい」と考えている方は中古品の購入も検討してみましょう。中古品=状態が悪いものばかりと思いがちですが、新品に近い状態のものも置いてある可能性があります。ネットオークションや機器の中古品を扱っているお店をのぞいてみてください。
3-4.レンタルについて
「3Dプリンターを利用したいけれど、頻繁に使うわけじゃないから購入するか迷う…」という方は、レンタルを利用するのも選択肢の1つです。レンタル業者にインターネットから申し込むだけで利用できます。ただし、利用期間によってレンタル料が変わるため、きちんと見積もりを確認しなければなりません。
4.3Dプリンターの処分・リサイクルについて
古い3Dプリンターを処分したいときはどうすればいいのでしょうか。リサイクル方法や買い取りなどについて詳しく説明します。
4-1.最近の3Dプリンターのリサイクル傾向
3Dプリンターの需要が高まってきているため、リサイクル活動も積極的な様子が見られます。特に、まだ使えるプリンターを処分するのは非常にもったいないことです。再利用してもらえるように、中古品業者やリサイクルショップで実施しています。
4-2.リサイクル方法
壊れていない3Dプリンターであれば、買い取りにまわしてください。買い取ってもらえたら処分費用も抑えつつ、地球にやさしいリサイクルができます。また、ネットオークションを利用するのも1つの方法です。
4-3.中古市場の需要
3Dプリンターの中古市場は高まっています。注目をあびているプリンターでもあるため、「中古品でもいいから安く購入したい!」という方が増えているのです。中古の需要が高まっていると、買い取り額も高くなる可能性があります。
4-4.買い取りについて
基本的に、買い取りができる3Dプリンターは正常に稼働できるものです。壊れているものは買い取ってもらえませんので注意してください。買い取りは中古品を取り扱っている業者やリサイクルショップ・買取専門店に依頼できます。業者やお店によって買い取り額が異なるため、複数のお店を比較したほうがいいでしょう。
4-5.高額査定のポイント
高額査定のポイントを以下にまとめてみました。
- キレイな状態か
- 製造月日が新しいか
- 取扱説明書やソフトなどの付属品の有無
- 目立つ傷や汚れがついていないか
- パーツに不具合がないか
4-6.業者選びのポイント
複数の業者からどこに依頼すべきか悩んだときは、以下のポイントに注目してみてください。
- 丁寧かつスピーディーな対応
- 3Dプリンターなどの機械に詳しいか
- 中古品の取扱量が多いか
- 古物商許可を取得しているか
買い取ったものを不法投棄する・依頼者の前で査定をしないという業者は悪徳業者です。接客対応も悪いため、スタッフの振る舞いを細部まできちんと確認しましょう。また、古物商許可を取得していない業者=悪徳業者なので気をつけてください。
5.3Dプリンターにかんしてよくある質問
3Dプリンターにかんしてよくある質問を5つピックアップしてみました。
5-1.3DCADと3DCGソフトはどこで手に入るのか?
パソコン専門店で購入するか、またはインターネットでダウンロードするかのどちらかになります。インターネットではフリーソフトのダウンロードも可能です。建築業界向けの「Trimble SketchUp」や2次元CADソフトの「DraftSight」、オープンソースでの3DCG統合ソフト「Blender」などがあります。
5-2.フロントエンドやスライサーなどは用意しなければならないのか?
家電量販店で販売されているほとんどの3Dプリンターに付属しています。ソフトがパッケージングされた状態で販売しているため、別途購入する必要はありません。念のため、購入する際はどんなソフトがついているのか確認しましょう。
5-3.3Dプリンターの使用目的で注意すべきこととは?
2014年に3Dプリンターで銃を作成した男性は銃刀法違反で逮捕されました。また、某漫画家が女性の陰部を3Dプリンターで再現し、卑猥(ひわい)なものに相当するものだとみなされた事件もあります。そのため、造形するものの選択を誤らないようにしてください。
5-4.3Dプリンターの売りどきはいつか?
具体的な売りどきはありません。売ろうと思ったときがベストな時期でしょう。また、3Dプリンターは次々と新しいタイプが登場しています。製造月日から時間がたつほど買い取り額が下がる可能性もあるため、できるだけ早めに売ったほうがいいでしょう。
5-5.買い取り価格はどれくらいか?
買い取り価格はメーカーや種類・プリンターの状態によって異なります。正常に稼働するものであれば、2万円~買い取り額がつく可能性があるでしょう。ただし、あくまで目安の価格となるため、買い取り価格がつかないものもあります。
まとめ
いかがでしたか? 一般的なプリンターは用紙に印刷しますが、3Dプリンターは立体的な造形物の作成ができます。そのため、製造業の現場においては重宝される機器といってもいいでしょう。開発の段階で完成形に近い試作ができます。ほかにも、建築・医療・教育・先端研究・航空宇宙と幅広い現場で活用されているのです。3Dプリンターにもいくつかの造形方式があり、使用する素材や強度などのできあがりが異なります。何のために使うのか、何をつくりたいのか目的を明確にしておきましょう。事前に3Dプリンターの基礎知識を把握しておけば、最適な種類が選択できますよ。