赤外線温度計の原理とは? 種類や購入・処分方法など徹底解析

この世にあるすべての物体は、表面から赤外線を放射しています。放射される赤外線のエネルギー量が増加するほど、表面温度が高くなるのが特徴です。赤外線温度計は、その放射エネルギー量を検知して温度を測る計測器となります。赤外線温度計の原理や基本的な使い方などの知識を持っておかなければ、上手に使用することができません。そこで、本記事では、赤外線温度計の基礎知識から、購入・処分・業者選びのポイントなどについて説明します。

  1. 赤外線温度計の基礎知識
  2. 赤外線温度計の種類や主な使い方
  3. 赤外線温度計の購入・処分について
  4. 赤外線温度計に関してよくある質問

この記事を読むことで、赤外線温度計について詳しく知り、用途に適した種類を選ぶことができます。購入・処分を検討している方はぜひチェックしてください。


1.赤外線温度計の基礎知識

用途に合った種類を選ぶためには、赤外線温度計の知識を身につけておかなければなりません。ここでは、概要やメカニズム・目的・必要性について説明します。

1-1.赤外線温度計とは

赤外線温度計は、放射温度計とも呼ばれており、物体から放射される赤外線・可視光線の強度を測定して、その物体の温度を測定する温度計のことです。手のひらを頬(ほお)に近づけると、暖かく感じますよね。それは、人間の手のひらから出ている赤外線を、皮膚が感知しているからです。赤外線はあらゆる物体の表面から放射しており、物体表面の温度は赤外線の量によって決まります。この温度を、赤外線温度というのです。赤外線は光の1種であり、肉眼で見ることができません。だからこそ、赤外線エネルギーから温度を測定する機器が必要となります。

1-2.メカニズム

赤外線温度計のメカニズムは、非常にシンプルです。赤外線は空間を伝ってエネルギーを運ぶ特徴があり、空間を伝ってきた赤外線を光学的に読み取ります。そして、物体とセンサーを接触させることなく、温度を測定する仕組みです。しかし、物体によって熱放射の放射率が異なるため、測定対象に合わせた放射率に設定しなければなりません。放射率とは、物体が赤外線エネルギーを吸収・放出する力の尺度です。実際の放射率よりも高く設定した場合は、出力が低くなります。そのため、対象温度は環境温度よりも高く設定するのが理想的です。

1-3.目的

赤外線温度計が活躍する場所は多岐にわたります。赤外線温度計は、ものから離れて温度が測定できるため、食品分野では食品・食材の温度管理に必要な機器です。食品・食材が適した状態で製造・保管できているのか確認できます。また、ほかにも電気・電子産業、化学工業、製紙・木材加工業などで使用することが多いのです。

1-4.必要性

ローラーや移動中の機械・コンベヤーベルトなど、動いている物体の温度を測定するのは困難です。しかし、赤外線温度計を使用すれば、物体から発している赤外線の測定で温度が分かるため、物体に近づけなくても測定できます。非接触型の測定が要求される場合以外にも、汚染・危険な環境や測定する温度が高い場合に必要です。

2.赤外線温度計の種類や主な使い方

赤外線温度計の種類・分類や主な使い方・手順、メーカーによる特徴について説明します。購入を検討している方は、要チェックです。

2-1.種類・分類について

赤外線温度計の種類は、携帯型(ハンディータイプ)と設置型の2タイプに区別できます。使用目的に適した種類を選ぶためには、それぞれの特徴をきちんと把握しておかなければなりません。携帯型(ハンディータイプ)と設置型の特徴とメリットを以下にまとめてみました。

<携帯型(ハンディータイプ)>

  • 特徴:検出部と変換部の区別がなく、両者が一体に構成されているタイプ。
  • メリット:小型で軽量。携帯して手に持って赤外線温度が測定できる

<設置型>

  • 特徴:検出部と変換部が構造上別体に分かれており、両者を接続ケーブルで結合する
  • メリット:固定して温度を測定するため、安定している

ほかにも、温度を可視化し一目で温度分布が分かる「熱画像型」などもあります。さまざまな種類があるため、購入する際は比較すると良いでしょう。

2-2.主な使い方・手順について

赤外線温度計の主な使い方は、とても簡単です。まず、赤外線温度計の放射率を設定しなければなりません。ほとんどの物体の放射率は、0~1の間に収まることになります。理想的な黒体は1、空気など赤外線を反射・透過するものは0となるので注意してください。放射率の設定が終わると、測定部分(測定視野)に赤外線測定器を向け、スイッチを押すと測定に入る流れです。ただし、種類やメーカーによって使い方が異なるため、事前に取扱説明書を読んでおきましょう。

2-3.メーカー・特徴について

赤外線温度計の製造・取り扱いメーカーといえば、ルマセンス・テクノロジー、ロトロニック、NEC Avio赤外線テクノロジー、キーエンス、ジャパンセンサーなどがあります。それぞれのメーカーによって、特徴が異なるので比較してみてください。たとえば、ルマセンス・テクノロジーは、ガス分析器・温熱環境計測器を専門に計測器を製造・販売しており、機器のユニークさと有効性が注目されています。ロトロニックは、測定データを確実に伝送するロトロニックモニタリングシステムが特徴です。

3.赤外線温度計の購入・処分について

赤外線温度計の購入・処分方法は、一体どのようになるのでしょうか。業者・商品選びのポイントから価格・中古・レンタル・処分・買い取りについて詳しく説明します。

3-1.業者・商品選びのポイント

質の良い商品を購入するためには、業者選びが大切となります。赤外線温度計が購入できる場所は、取扱店舗やメーカー直営店などになるでしょう。幅広い種類の中から適したものを選ぶためには、取扱量が多い業者を選んでください。さらに、以下のポイントを踏まえたうえで、慎重に業者を選ぶと良いでしょう。

  • スタッフの対応が丁寧でスピーディー
  • 回収処分を行っている場合、古物商許可証を取得している
  • 見積もり内容が細かく記載されている
  • 口コミ・評判が良い
  • 無料見積もり・相談ができる

また、赤外線温度計を選ぶ際は、使用目的を明確にしてください。目的がハッキリしていれば、スムーズに商品を選ぶことができます。特に、注意してほしいのが、赤外線温度計の測定できる範囲(スポット経)と測定距離です。正確に温度を測定するためには、決まったスポット経と測定距離を把握しておかなければなりません。

3-2.価格について

赤外線温度計の価格は、サイズや機能・メーカーなどによって異なります。ハンドタイプで簡易的なタイプは、1万円以内で購入可能です。しかし、1万円以内で購入できるものは、測定範囲が狭い傾向があります。測定範囲が広くなるほど、価格も高くなりがちなので注意してください。設置型で測定範囲が広いものは、10万~数百万円するものまであります。機能や測定範囲などもきちんと確認したうえで、価格を比較しましょう。

3-3.中古について

「できるだけ費用を抑えたい」という方は、中古品がおすすめです。中古品といえば、状態が悪く、すぐに壊れやすいと思う方が多いのではないでしょうか。しかし、すべての中古品が壊れやすいとはいえません。優良業者は、状態の良い中古品がそろっており、新品よりも安く購入できる可能性があります。

3-4.レンタルについて

短期間の限定利用であれば、レンタルを利用するのも選択肢の1つです。赤外線温度計のレンタルを行っているメーカーもあり、新品を購入するよりも費用を安く抑えることができます。ただし、レンタル期間が長くなるほど費用もかかり、購入費用よりも高くなる可能性があるので注意が必要です。レンタルの利用期間や料金をきちんと計算したうえで、検討してください。

3-5.処分について

古くて使えないものは、処分しなければなりません。ほとんどの自治体では、赤外線温度計を含めた計測器類は、資源ごみに分類しています。特に、水銀を使用している機器は、適切な回収・処理を行わなければなりません。すべての自治体が資源ごみに分類しているとも限りませんので、事前にホームページなどで確認しておきましょう。また、自治体で処分方法が分からない場合は、業者に依頼すると良いですよ。

3-6.買い取りについて

壊れていないもの・正常に使用できるものを捨てるのは、もったいないことです。そんなときは、業者の買い取りを利用してください。目立つ傷や汚れがなく、新品状態に近いものであれば、買い取ってもらえる可能性があります。

3-7.注意点

「回収後、不法投棄されていた」「見積もり内容とは異なる金額を請求された」など、業者との間でトラブルが多発しています。トラブルにならないためには、慎重に業者を選ばなければなりません。業者選びのポイントを踏まえつつ、複数を比較してください。比較すれば、信用できる業者に依頼できるでしょう。

4.赤外線温度計に関してよくある質問

赤外線温度計に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

4-1.放射率が分からない場合はどうすべきか?

測定対象となる物体の放射率が分からない場合は、2つの方法があります。1つ目は、接触式温度計を使用する方法です。熱電対など接触式温度計と赤外線温度計の2つを使い、それぞれの表示値が一致するように放射率を設定してください。2つ目は、黒体スプレー(テープ)を使用する方法です。黒体スプレー(テープ)を測定対象物にかける(または貼りつける)ことで、完全黒体とし、測定することができます。

4-2.測定時の注意点とは?

安定して物体の温度を測定しなければなりません。安定を確保するためには、スポット経の1.5倍程度が物体に収まるように工夫してください。スポット経の外側も検知する可能性があるため、きちんと収まらなければ誤差が生じてしまいます。また、高温物体を測定するときは、測定に必要な赤外線以外を遮蔽(しゃへい)するようにしてください。

4-3.具体的な放射率の値が知りたい

ほとんどの物体は、放射率が0~1です。しかし、物体によってわずかな差があります。たとえば、コンクリートは0.94、砂は0.9、粘土は0.85~0.90、石膏(せっこう)は0.80~0.90、ガラスは0.75~0.95です。

4-4.ハンドヘルド赤外線温度計とは?

ハンドヘルド赤外線温度計は、さまざまな種類がある中、最も人気のあるタイプです。一般的に、携帯用として使用することが多く、一体型三脚マウントも可能なモデルがあります。メーカーのオメガは、さまざまな形態・フォームファクターの多様なタイプを販売しており、温度計の視野をハッキリと示すサークルドット・サークルレーザー標準がついているのが特徴です。

4-5.赤外線温度計の買い取り額アップのコツとは?

目立つ傷や汚れがついている場合は、キレイに掃除してください。古くて汚いものほど買い取り額が下がり、価値がつかない可能性もあります。新品状態に近いものほど高く売れる傾向があるのです。また、接続ケーブルや取扱説明書などの付属品も一緒に提示してください。スムーズに取り引きができるように、あらかじめメーカーや型番・販売年月日なども確認しておくと良いでしょう。

まとめ

いかがでしたか? 赤外線温度計は、物体から放射される赤外線の強度を測定して、その物体の温度を測定する温度計のことです。物体に直接触れずとも、赤外線エネルギーを感知することで温度を測定することができます。そのため、食品・食材の製造や管理、工業分野、電子・電気分野など幅広い分野で必要な測定器です。物体によって、放射率が異なるため、赤外線温度計を使用する際は放射率を正しく設定しなければなりません。きちんと正しい使い方や商品選びのポイントを押さえておけば、適した種類が選択できるでしょう。処分する際も、正常に稼働できるものは買い取りにまわしてください。赤外線温度計の基礎知識を身につけて、上手に使いましょう。